2008年3月10日月曜日

[109] 長谷川有機子 - 編鐘 水の祈り


Label: 有機音工房
Catalog#: -
Format: CD, Album
Country: Japan
Released: 2003

1 水の源(源流) 3:16

2 緑したたる(上流) 6:12
3 命はぐくむ(中流) 5:04
4 海へ(下流) 6:20
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2008年1月、NHKで「京 音をめぐる」という番組が放送されていました。私が幸いに見ることができたのはそのうちの何章かで、「晩鐘の音」(中川真氏が登場)「技の音」「暮らしの音」など、昔から続く京都の生活や文化をサウンドスケープの視点から紹介するという内容。その番組の中で、一人の女性が風変わりなカリヨンを演奏している様子が流れていました。その方が編鐘演奏家の長谷川有機子さん。復元された古代中国の宮廷楽器「編鐘」を奏で、自然・風景・祭礼を写し取る作曲活動を行っており、森羅万象に耳を澄ますことで感受性を育てる「イヤー・ゲーム」を教育の場で実践されています。賀茂川の源流から淀川の河口まで辿り、風景からメロディを授かったという本作は、現地録音された水の音を背景に、琴鐘・編鐘~カリンバ~タイの太鼓やジャンベといったリズムを強調した楽器が加わり、動的に移り変わっていきます。中でもカリンバと久乗編鐘の組み合わせた#3 "命はぐくむ" は何とも不思議な異国情緒があります。


... An instrumental CD of the rare instrument, Chinese Bells called "Hensho".  Titled "Hensho Mizu-no Inori" (Bell and River's Prayer).  Composer / performer Yukiko Hasegawa has written four pieces inspired by her fondness of the sound of the river.  In this disc, Hasegawa plays the Chinese Bells in Honen-in Temple (Kyoto) and as a harmony has recorded the sound of water flowing from its source (Kamogawa River) until it meets with the Yodogawa River and enters into Osaka Bay - the juxtaposition of human and nature dance together in a sound scape of quiet beauty.  The origin of Hensho dates back to ancient palace music.  A Hensho was placed in a Chinese burial tomb 2400 years ago (400 B.C.).  In Japan, only a handful of Hensho exist.


2008年3月8日土曜日

[105] イノヤマランド - 変形菌のための音楽


Label: Transonic Records
Catalog#: TRS-25025
Format: CD, Album
Country: Japan
Released: 1998

1 Hair Air 8:39
2 Sakusaku 6:54
3 Candy 8:53
4 Hattifnatt 5:44
5 Flying 1:22
6 Bananatron 7:51
7 Happy Birthday 5:50
8 Pixy 5:40
9 See Saw 4:15
10 Morn 7:40
11 Abatwa 3:07

「無尽無究の大宇宙の大宇宙のまだ大宇宙を包蔵する大宇宙を、たとえば顕微鏡一台買うてだに一生見て楽しむところ尽きず」(南方熊楠)
明治39年、複数の神社の祭神を一つの神社にまとめる神社合祀が行われ、かなりの数の社殿が姿を消したといわれています。この勅令に対して、神社の杜(鎮守の森やご神木)の伐採は生物を絶滅させ生態系を変えてしまうと考え、強く反対した人々の中に、博物学者・民俗学者の南方熊楠がいました。この熊楠が熱心に研究していた対象のひとつが変形菌(粘菌)。変形菌とは、微生物などを摂食しながら胞子により繁殖する、動物と植物の特徴を併せ持つ生物。このミクロの宇宙から感じた驚異や生命のダイナミズムが、環境保護の先駆的活動へと熊楠を突き動かしたのかもしれません。
変形菌のための音楽」は、1997-98年に上野国立科学博物館で開催された企画展「変形菌の世界」の館内音楽。作者は井上誠と山下康によるユニット Inoyama Land(イノヤマランド)。2人はヒカシューのシンセ奏者としても知られ、細野晴臣プロデュースによる83年作「ダンジンダン・ポジドン」では、ジャーマン・エレクトロニクスへの回答と評されるミニマルかつ叙情的なサウンドを作り上げた草分け的存在。90年代以降も博物館や展覧会のサウンドデザインなど多方面で活躍しています(最近ではリスーピア/パナソニックセンター東京の館内音楽を担当。)2人の操るやわらかな音色のシンセに、森のサウンドスケープを大々的に取り入れ、ネイチャー・サイエンスの世界への好奇心を刺激しながら黙想へと誘い込む、瑞々しいアンビエント・サウンド解説書には、変形菌の生態や培養の写真を掲載。さらに「本音源の付録として本物の変形菌を添付し、音盤の透明外箱に一寸細工を行い、拡大鏡の役目を命ずれば、名実共に『Music fur Schleimplize』となる……」と、実物見本をパッケージする当初の構想が記されていますが、それは衛生面から取りやめにしたとのことです。音楽も題材も、森の環境音楽と呼ぶに相応しい秀作です。

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田村洋/イノヤマランド - ストレス(ストレス・リラクセーション)
EMIのセルフ・コントロール・ミュージック・シリーズ(88年発表)の中で、森をイメージした1枚。イノヤマランド担当の後半は、"木漏れ日" という曲が5編収録されていますが、リラクゼーション音楽としてやや優しすぎる作風になっていて、前半の田村洋によるシリアスで音数の少ない曲に環境音楽としての発見がありました。このシリーズはほかに、血圧が高い人のための「鎮静」、血圧が低い人のための「活力」、眠れない人のための「不眠」、疲れている人のための「疲労」の全5作。95年に別のアートワークで再発。